【京大過去問解説】京大化学2019 大問4完全解説|有機化学で時間節約の術を学ぼう!!

2019年
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KUT
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今回は\(2019\)年京都大学の大問\(4\)について解説していきます.今回も京大の入試だけでなく,入試全般にとって大切で基礎的な内容満載で解説しているので,ぜひ最後までご覧ください!昨日の自分より少しでもレベルアップしていきましょう!

 

大問\(4\)の総評

こんにちは,\(\rm{KUT}\)です.

本記事では,\(2019\)年京大化学の大問\(4\)について解説していきます.
また解説に加えて,それぞれの問題で覚えておいてほしいポイントについて詳しく説明していきます.

京大の化学は難しいという印象が強い方が多いと思いますが,京大化学には難しい問題標準問題の\(2\)つがあります.ここで,受験生が対策すべきことが\(2\)つあります.

\(1\)つ目は,標準問題を最後まで解き切る力を身につけることです.これにより,まずは平均点を取ることを目指します.

\(2\)つ目は,難しい問題と標準問題を見分けられる目を養うことです.試験本番は時間制限内に自分の解ける問題を解き切る必要があります.そのため,難しい問題は解かずに,標準問題をしっかりと選択していきながら,最後まで解いていくことが必要になります.

この記事では,問題を選択していく目を養うために,どのようにして判断していくのかということも自分なりに説明していきます.

 
 
それでは,\(2019\)年京大化学の大問\(4\)の解説に進んでいきましょう!

 
 
 
 

大問\(4\)

(\(\rm{a}\))

アルドースという化合物の立体異性体に関する問題です.ヒントが問題に散らばっていますが,鏡像異性体などに関する知識が十分に身についている必要があります.今回の問題で自分のものにしていきましょう!

問1

まずは反応2の考え方を解説していきます.図\(3\)から反応2を行うと,炭素が\(1\)コ減少します.これは\(2\)位の炭素を除く!と考えましょう.

reaction 2

京大化学ではこのように見たことのない反応が出題されることが多々ありますが,自分でわかりやすく解釈する必要があります.過去問演習のときに意識しながら解くことが大切です!これからもこの点を意識した解説をしていきますね!

まず,\(n=2\)のときの反応前のアルドースを書き出してみましょう.
これらに反応\(2\)を行うと,下のようになります.

ardose

 
今回書き出したように,自分で解くときには\(\rm{H}\)原子を省略して書くことで,メモが見やすくなりますよ!

 
CEDFはそれぞれ同じなので,最終的には\(2\)種類の生成物が得られます.

reaction 2

 
 
今回の問題文にあるように,不斉炭素原子が\(2\)コある場合は,鏡像異性体を含めて\(4\)種類の立体異性体が存在しますが,\(3\)種類しか立体異性体が存在しない場合もあります.鏡像異性体もこの後の問いで問われているので,不安な方は以下の記事で詳しく取り上げていますので,そちらをご覧ください!

【学校では教えてくれない】異性体のあれこれ!光学異性体への苦手意識をなくそう!
異性体と一言で言っても様々なものがあります.これを全て区別してしっかりと理解できていますか?今回は皆さんが苦手とする鏡像異性体やメソ体などをどこよりもわかりやすく解説していきます.この記事を最後まで読んでいただければ,このての問題に対する苦手意識を解くことができますよ!それでは今日も元気よく始めていきましょう!

問\(2\)

次は,反応1に関する問題です.
反応1は単純な酸化反応で,\(1\)位と末端の炭素を\(\rm{COOH}\)基に変化させれば\(\rm{OK}\)です!

(あ)から(く)まである各化合物をすべて書き出して酸化させれば答えは出るのですが,それでは時間がかかりすぎてしまいます.

ここでポイントがあります.すべての化合物で\(1\)位と末端の炭素は\(\rm{COOH}\)基になっているため,これらを書き出さなくても鏡像異性体を見つけることができます.

reaction 1

これらは問題用紙に書いてあるので,わざわざ書き出す必要はありません.問題用紙に書いてある(あ)から(く)の物質を見て,鏡像異性体の関係にあるものを探していきます.実際にやってみましょう.

実際にやってみると,(あ)(え)(か)(き)については,分子内に対称面があり,(あ)(き)(え)(か)はそれぞれまったく同じ化合物であることがわかります.つまりこれらは鏡像異性体の関係にはありません.よって,答えは(あ)(え)(か)(き)になります.

 

(い)(く)については互いに鏡像異性体ですが,(い)を\(180^\circ\)回転させると,(う)と一致します.そして同様に(お)を\(180^\circ\)回転させると,(く)と一致します.そのため立体異性体は全部で(あ)(い)(え)(く)の\(4\)種類となります.

問\(3\)

まずはGの条件を書き出してみましょう.

conditions

Gに対して反応1を行うと,鏡像異性体をもつ化合物が得られたので,問\(2\)より(い)(う)(お)(く)のいずれかであると考えられます.これらの化合物を頭に入れた上で,反応2反応1をしてE \(\rm{or}\) Fがどの化合物かを考えていきます.

この問題でも先ほどと同様に\(2\)位から\(4\)位の炭素を抜き出して考えます.ただし,反応2を行うと,\(2\)位の炭素が抜かれるため,実際は\(3\)位と\(4\)位の炭素だけを考えればよいことがわかります.

そのためG(い)(く)のいずれかになります.

(\(\rm{b}\))

(\(\rm{b}\))は天然有機物や合成高分子に関する問題です.これらの問題でも基礎的な内容をしっかりと理解していなければ,自身をもって解答できないと思います.しっかりと学んでくださいね!

問\(4\)

まずはナイロン\(66\)とナイロン\(6\)の復習からしておきましょう.

ナイロン\(6\)は,\(\varepsilon\)-カプロラクタムの開環重合で生成されます.この開環重合は,モノマーである環状化合物の環構造に立体的な無理があると壊れやすくなるため,反応は進みやすくなります.このナイロン\(6\)は日本で初めて合成されました.

nylon 6

図のような環状アミド化合物をラクタム,環状エステル化合物をラクトムといいます.

lactum

 
\(\varepsilon\)-カプロラクタムの名前の由来について少しみておきましょう.
炭素数\(6\)のカルボン酸であるカプロン酸の\(\varepsilon\)位にアミノ基が結合した化合物を\(\varepsilon\)-アミノカプロン酸といいます.そしてこの\(\varepsilon\)-アミノカプロン酸が分子内で縮合して環状アミドであるラクタムを形成したのが,\(\varepsilon\)-カプロラクタムとなります.

ε-caprolactum

 
 
 
 
ナイロン\(66\)はジアミンであるヘキサメチレンジアミンとジカルボン酸であるアジピン酸を縮重合して作られた世界初の合成繊維です.

nylon66

ナイロンのメリット・デメリットについても簡単におさえておきましょう!

  • メリット
    • 引っ張り強度が大きい
    • 弾力性が大きい
    • 対薬品性に優れている
    • 軽い
  • デメリット
    • 吸湿性が小さい
    • 熱に弱い

特に,\(\rm{H}\)と\(\rm{O}\)が分子間で水素結合するため,引っ張り強度が大きいというのは重要です.またメチレン基(-\(\rm{CH_2}\)-)の部分の\(\rm{-C-C-}\)の炭素の単結合が自由に回転できるため,柔軟性をもつということもあわせて覚えておいてくださいね!

 
 
 
さて,ここまで理解したところで今回の問題を解いていきましょう.まずはIの条件を書き出してみましょう.

conditions

ナイロン\(6\),ナイロン\(66\)のいずれにもアミド結合があります.先程のナイロン\(6\)とナイロン\(66\)の合成で説明したように,これらの物質には作り方が\(2\)通りあります.

  1. 縮重合
  2. 開環重合

これらを基に繰り返し単位が\(\rm{C_{11}H_{21}NO}\)で,かつ分岐のない炭化水素鎖の両端に異なる官能基を有するものは以下の\(2\)つが考えられます.

polyamide

今回の問題文ではIの両端にそれぞれ異なる官能基を\(1\)つずつ有するという記述があるため,環状構造になっていないモノマーを解答とします.

今回の問題はニュアンスが難しいですが,ここで\(2\)通りの重合が思い浮かぶことが大切ですよ!それぞれのナイロン\(6\)とナイロン\(66\)の製法をしっかりと覚えておきましょう!

 
 
 
次に,Jについて考えていきます.
Jの分子式は\(\rm{C_6H_{10}O_2}\)で表され,重合に関与する官能基以外の構造がナイロン\(6\)の合成に関するモノマーと同じことがわかります.つまり,\(\varepsilon\)-カプロラクタムと構造がほぼ似ているということです.これからJを以下のように考えることができます.

ε-caprolactone

問\(5\)

問題文にKからNまで多くの物質が出てきますが,落ち着いて取り組みましょう!

まず,Kはオレイン酸と炭素数が同じで,かつ\(\rm{OH}\)基と\(\rm{COOH}\)基があることがわかります.ここでオレイン酸の炭素数を覚えていないとしても解くことができるため,忘れたものとして解いてみましょう.オレイン酸には\(\rm{C=C}\)結合(シス型)が\(1\)つあるのですが,これについてもこの問題では考える必要はありません!

oleic acid

 
ただしオレイン酸については重要ですので,下の記事でしっかりと復習しておきましょう!

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次は,Lについてです.
Lは\(\beta\)グルコース\(2\)分子が,\(\rm{C1}\)と\(\rm{C2}\)でグルコシド結合を形成したものであるとわかります.これを表すと,次のようになります.

glycosidic bond

 
 
最後に,Mについて考えます.
Mは,KLが分子間脱水縮合した化合物です.問題文からKのもつ\(\rm{COOH}\)基が\(\rm{C1}\)でグリコシド結合した下のグルコースの\(4\)位の\(\rm{OH}\)基と脱水縮合することがわかります.さらに,Mは還元性がないため,\(1\)位の\(\rm{OH}\)基はありません.これはKのもつ\(\rm{OH}\)基との脱水縮合と考えればよいでしょう.

問\(6\)

NMの\(1\)つの結合が加水分解されて生じた分子ですが,フェーリング液で還元性を示さないため,\(4\)位のエステル結合が加水分解されたと考えられます.そのためNにはカルボキシ基(\(\rm{COOH}\)基)が存在します.

\(\rm{pH}\)を変化させると,このカルボキシ基の電離度は変化しますが,\(\rm{pH=4}\)は弱酸性のため,ほとんど電離しません.そのため,Kに由来する部分の疎水性が増すため,親水性のL由来の部分を外側にしたミセルが形成されます.

最後に

最後まで閲覧していただきありがとうございました.
本記事の内容についてわからない点があれば,遠慮なく質問していただければと思います.
(\(\rm{Twitter}\):chem_story1

京都大学の化学は難問が多いと言われますが,その分多くのことを学ぶことができます.
皆さんの学習の一助になれば幸いです.

 
今回の問題についてはこちらの参考書に載っています!もっていない方はぜひ自分の勉強のお供にしましょう!

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