【学校では教えてくれない】異性体のあれこれ!光学異性体への苦手意識をなくそう!

isomer 有機化学
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異性体と一言で言っても様々なものがあります.これを全て区別してしっかりと理解できていますか?

今回は皆さんが苦手とする鏡像異性体やメソ体などをどこよりもわかりやすく解説していきます.この記事を最後まで読んでいただければ,このての問題に対する苦手意識を解くことができますよ!

それでは今日も元気よく始めていきましょう!

 

そもそもどんな異性体があるの?

まずは異性体の種類についてまとめていきましょう.

isomer

同じ分子式をもちながら異なった性質をもつものを異性体と呼びます.そしてこの異性体には性質の違いによって,大きく\(2\)つに分かれます.

  1. 原子や結合の配列順序が異なる→構造異性体
  2. 空間的な配置が異なる→立体異性体

isomer

これを見ると,配列が違う場合が構造異性体,それを立体的に組み立てたときに異なった構造をもつ場合が立体異性体であることがわかると思います.そして立体異性体にはさらに幾何異性体と光学異性体があります.

今回は光学異性体をさらに深堀りしていきます.

光学異性体

物質の化学的性質や物理的性質はまったく変わらず,偏光面を回転させる性質(旋光性)のみが異なるものを光学異性体といいます.これは光学的性質の違いのみで分類されています.

旋光性については後ほど詳しく解説しますね.

鏡像異性体

鏡像異性体を理解するために,下のような\(2\)つの物質を考えてみましょう.これは左側の化合物を鏡に写したものが右側になっています.

mirror image isomer

ここでもしU \(=\) Zの場合,片方を\(180^\circ\)回転させると\(2\)つの物質はまったく同じものとなります.そのため光学的に異なる性質をもつためには,全ての原子が異なっている必要があります.

このように炭素原子に4種の異なる原子または原子団が結合している炭素を特別に不斉炭素原子と呼び,\(\rm{C^*}\)とかきます.

不斉炭素原子があるときは光学異性体が存在する.

 
さて,不斉炭素原子をもつ化合物を先ほどと同じように鏡に映すと,互いに実体と鏡像の関係になります.このような化合物を互いに鏡像異性体(\(\rm{enantiomer}\):エナンチオマー)といいます.

 
ここで鏡像異性体の書き方を解説していきます.
\(\rm{CH_3CHClCOOH}\)を例として,以下の\(3\)ステップで書いていきます.

【鏡像異性体】
\(\rm{Step1:}\)不斉炭素原子があるかの確認
\(\rm{Step2:}\)ある化合物を書く
\(\rm{Step3:}\)鏡面に映した化合物を書く

 
\(\rm{Step1}\)
この物質の\(2\)位の炭素についている原子や原子団はすべて異なっています.そのため\(2\)位の炭素原子は不斉炭素原子であることがわかります.

asymmetric carbon atom

 
\(\rm{Step2}\)
不斉炭素原子を見つけたら,この化合物を立体的に書きます.
このとき最初の物質についてはどのように書いても大丈夫です.

isomer

 
\(\rm{Step3}\)
そしてここからが勝負です.
鏡面に映したように書くということは,鏡面に近い方を近く書いていけば\(\rm{OK}\)です.

mirror image isomer

こう考えると,簡単に書くことができますね!難しく考えすぎないようにしましょう!

 
ここからは不斉炭素原子の数の違いによってさらに複雑になってきます.
ただ受験で問われるのは,不斉炭素原子が\(1\)つ \(\rm{or}\) \(2\)つのときだけなので,これらを詳しく見ていきましょう!

不斉炭素原子が\(1\)つ

不斉炭素原子が\(1\)つの場合として,代表的な化合物が乳酸です.
乳酸は以下のような構造をしています.

lactic acid

この構造は入試で問われることがあるので,必ず覚えてください!

 
さて,乳酸には不斉炭素原子があるので,鏡像異性体を考えていきましょう.

lactic acid

これらにはそれぞれ名前がついていて,左側が\(\rm{L}\)-乳酸,右側が\(\rm{D}\)-乳酸といいます.ただ,名前は覚える必要ありませんよ!

乳酸は一般に,自然界では\(2\)種類存在することが知られています.ただ,人工合成したものは必ず\(\rm{D}\)型と\(\rm{L}\)型が等量ずつの混合物が生成されます.これをラセミ体といいます.

旋光性と光学活性

ここで,ラセミ体を理解するために,旋光性について簡単にふれておきます.

光というのは,一般的にあらゆる方向に振動しています.この光を偏光板に通すと,一方向のみに振動する光が得られます.この光を偏光といい,その面のことを偏光面といいます.

 
この偏光を不斉炭素原子をもつ化合物の一方の鏡像異性体の溶液に通すと,この偏光が左 \(\rm{or}\) 右のいずれかに回転します.この性質を旋光性といい,この性質をもつ物質を光学活性といいます.

 
先ほどの乳酸で考えると,\(\rm{L}\)-乳酸は右旋性,\(\rm{D}\)-乳酸は左旋性であり,その回転角は必ず等しくなります.このため\(\rm{L}\)-乳酸と\(\rm{D}\)-乳酸が等量混合されたラセミ体で偏光性を考えると,旋光度がちょうど打ち消しあうため,偏光面はまったく回転せず,見かけ上光学不活性となります.

不斉炭素原子が\(2\)つ

一般的に不斉炭素原子が\(n\)コある場合,最大で\(2^n\)コあります.そのため不斉炭素原子が\(2\)つある場合,最大で\(4\)コの立体異性体を考えることができます.

ここで,不斉炭素原子が\(2\)つある物質として酒石酸を考えましょう.

tartaric acid

この立体異性体を考えると以下のように\(4\)コ考えることができます.

tartaric acid

それぞれの関係性について深くみていきます.
ABは互いに鏡像異性体の関係にあり,CDも互いに鏡像異性体の関係にあります.
ここまでは大丈夫ですか?

ここでAをくるっと\(\rm{180^\circ}\)回転させると,Bとまったく同じになるため,ABは同じ物質ということです.

さらにBについては分子内にちょうど対称面をもちます.この場合,分子の上半分と下半分が互いに鏡像の関係になっていることがわかります.つまり,分子内で旋光性が打ち消され,光学不活性となります.このような物質をメソ体といいます.

【メソ体はいいつあるの?】
メソ体は不斉炭素原子が偶数で,かつ分子内に対称面がある場合に限って存在します.

ジアステレオマー異性体

先程の酒石酸についてですが,BCあるいはBDの関係は図でわかるように,鏡像体の関係にないことがわかります.このように鏡像異性体の関係にない立体異性体をジアステレオマー(\(\rm{diastereomer}\))といいます.

ジアステレオマーでは,各置換基が異なっているので,旋光性だけでなく,他の物理的な性質も異なります.

 
 
 
 
異性体に対する疑問を解決することはできましたか?それぞれどのような用語はどんな条件で出てくるのかをおさえておくことで,問題を解いているときの混乱を防げると思います.問題演習を通して,真の実力をつけていきましょう!

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