【電子の動きから有機化学を理解】プロセスを理解すれば有機化学は簡単!?アルキン反応

有機化学
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前回は有機化学の考え方やアルカン(全て単結合)やアルケン(二重結合が\(1\)個)について学習しました.今回はアルキンについて学習していきます.今回についても電子の動きなどもわかりやすく解説していきます!
 
それでは今日も頑張っていきましょう!
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アルキンってどんな物質?

まずはアルキンという名前について考えてみましょう.

アルキンは構成元素が\(\rm{C}\)と\(\rm{H}\)のみからなり,三重結合(\(\rm{C≡C}\))が\(1\)つあります.\(\rm{alkyne}\)の「\(\rm{alk}\)」は炭素数を,「\(\rm{y}\)」は\(\rm{C≡C×1}\),語尾の「\(\rm{e}\)」は構成元素が\(\rm{C \cdot H}\)のみであることを表しています.

三重結合をもっているということは,\(π\)結合が\(2\)つもあるということです!そのためアルキンの反応は,この\(2\)つの\(π\)結合によってもたらされます.

また\(\rm{R-C≡C-H}\)の\(\rm{C-H}\)は,通常の\(\rm{C-H}\)に比べて極性が高く,塩基性条件では若干ですが電離することができます.この性質については,次に詳しく説明していきます!

アルキンの反応

アルキンでは主にアセチレンが出てくるので,アセチレン(\(\rm{H-C≡C-H}\))の反応についてみていきましょう!

アセチリドの沈殿生成反応

\(\rm{R-C≡C-H}\)は,下のように若干ですが電離します.

電離定数は\(K_{\rm{a}} = 1.0 × 10^{-25}\)程度なので,水の電離より起こりにくいです.そのため\(\rm{R-C≡C-H}\)は中性物質と考えて大丈夫です!

ここで,この中に\(\rm{NH_3}\)由来の塩基性条件にすると,以下の反応が起こります.

\(\rm{NH_3\ +\ H^+\ →\ NH_4^+}\)

すると溶液中の\(\rm{H^+}\)濃度が減少し,ル・シェトリエの原理より平衡が右に傾くようになります.この溶液に\(\rm{Ag^+\ or\ Cu^+}\)を加えると,\(\rm{R-C≡C-Ag}\),\(\rm{R-C≡C-Cu}\)となって沈殿します.下の図で確認してみましょう!

上の反応を見ていただくとわかるように,三重結合のとなりにある\(\rm{H}\)が電離しやすくなっているので,\(\rm{R_1-C≡C-R_2}\)のようになっているときは電離できません.この考え方を用いると,\(\rm{Ag^+\ or\ Cu^+}\)を加えて沈殿が生じるということは,\(\rm{C≡C}\)があるだけでなく,\(\rm{C≡C}\)が端にあることがわかります.
このポイントを押さえておくと,構造決定の問題で素早く解くことができます!!

アセチレンの生成反応

アセチレンはカルシウムカーバイド(\(\rm{CaC_2}\))と水を以下のように反応させると発生します.

\(\rm{CaC_2\ +\ 2H_2O\ →\ Ca(OH)_2\ +\ HC≡CH↑}\)

カルシウムカーバイドのアセチレン生成反応は,カーバイドイオンが水の電離で生じた\(\rm{H^+}\)と結合してアセチレンとなる反応です.水の電離で生じる\(\rm{OH^-}\)が\(\rm{Ca^2+}\)と反応して\(\rm{Ca(OH)_2}\)が生じます.


 

【参考】
カルシウムカーバイドについて解説しておきます.

まずカーバイドとは,炭素(\(\rm{carbon}\))の陰イオン(〜\(\rm{ide}\))という意味です.化学では,陰イオンに対して英語で語尾を〜\(\rm{ide}\)とすることがよくあります.

カルシウムカーバイドの作り方について見ておきましょう!カルシウムカーバイドは石灰石(\(\rm{CaCO_3}\))を加熱して得られる生石灰(\(\rm{CaO}\))とコークス(\(\rm{C}\))を強熱することで得られます.

\(\rm{CaCO_3\ →\ CaO\ +\ CO_2}\)
\(\rm{CaO\ +\ 3C\ →\ CaC_2\ +\ CO}\)

このあたりは無機の復習になるので,この機会にぜひ見直ししてみてください!

付加反応

アセチレンなどのアルキンは,アルケンと同様に\(\rm{H_2}\),\(\rm{Br_2}\),\(\rm{HX}\)(水素化物)と付加反応します.ただ\(\rm{H_2O}\)の付加反応については,\(\rm{H_2}\),\(\rm{Br_2}\),\(\rm{HX}\)(水素化物)の付加反応とは違うので,これについては別に解説しますね!

\(\rm{H_2}\),\(\rm{Br_2}\)の付加反応

\(\rm{H_2}\),\(\rm{Br_2}\)の付加反応についてはアルケンと同様の反応が起こります.ただ\(\rm{H_2}\)の付加反応には,\(\rm{Ni\ or\ Pt}\)の触媒が必要です!

\(\rm{HX}\)(水素化物)の付加反応

\(\rm{HX}\)(水素化物)の付加反応はアルケンとは若干違いがあります.アルキンはアルケンより反応性が低いため,\(\rm{Hg^{2+}}\)の触媒が必要となります.また非対称アルキンへの\(\rm{HX}\)(水素化物)の付加反応はアルケンと同様にマルコフニコフ則が当てはまります.

\(\rm{H_2O}\)付加反応

アセチレンに\(\rm{Hg^{2+}}\)触媒下で\(\rm{H_2O}\)を付加すると,ビニルアルコールが一瞬生成します.ただビニルアルコールは不安定な物質なので,さらに安定なアセトアルデヒドになります.これをエノール・ケト互換性といいます.

【エノール・ケト互換性】
エノール・ケト互換性の覚え方をわかりやすく解説していきます!

\(\rm{C=C}\)結合に\(\rm{OH}\)基(ヒドロキシ基)が結合した構造をエノール型といいます.このエノール型があるときは,図のように\(\rm{O}\)と\(\rm{H}\)の結合を省略せずに書きます!そして\(\rm{OH}\)の結合していない\(\rm{C}\)原子に\(\rm{H}\)が,\(π\)結合が\(\rm{C}\)と\(\rm{O}\)の間にそれぞれ移動します.

「\(π\)結合と\(\rm{H}\)原子がお引っ越しする」と覚えましょう!

これはしっかりと自分で矢印を書いて覚えるようにしてください!

 
エノール・ケト互換性は慣れるまで難しいので,最後に練習問題を解いてみましょう!

プロピン(\(\rm{CH_3-C≡CH}\))に\(\rm{H_2O}\)が付加反応するときの主生成物を考えてみましょう.
 
 
まず,プロピンに\(\rm{H_2O}\)が付加するとき,\(\rm{H_2O}\)の\(\rm{H}\)がどちらに結合するのかを見極める必要があります.アルケンのときにも勉強したように,ここではマルコフニコフ則があてはまります.マルコフニコフ則は,「\(\rm{H^+}\)は仲間の多い方に行く!」でしたね!

ここで終わってはいけませんよ!

\(\rm{C=C}\)結合に\(\rm{OH}\)基(ヒドロキシ基)が結合しているエノール型なので,ケト型へ変化していきます.
そのため以下のようになります.


 
 
 

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何度も復習してエノール・ケト互換性に慣れてくださいね!

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